Vol.34 アシート試作テスト

 

お正月気分も終わり、本年度もあとわずかということで皆様いかがお過ごしでしょうか。
今回の「知って得するインソールの豆知識」はアシートの通常製品を少し変更した試作品をテストしてみた結果をご紹介したいと思います。

長年ご好評頂いているアシートですが、多くの方から「そのままの製品を販売し続けてほしい」という声がある一方、細かな改良のご要望を頂くこともあります。
今回はその中でもアシートの履き心地や変形(折れ等)に関わっている波形の向きについて試作してみました。

 

●テスト内容

通常アシートは真横から見て波目が見えるようになっています。これを段ボール用語では横方向に段目が入っている等と表現します。

これを斜め(45度)段目にしたものと縦(90度)段目にしたものについて社内テスター3名に2日間履いてもらい、製品版アシートとの比較をしてみました。3名は主に都内を公共交通機関で移動している外回りの営業スタッフにつき使用状況はハードと言えます。

なお試作品は製品版のOタイプと同じ生地を使っていますので、比較もOタイプとの比較になります。使用した万歩計の数値は下記のようになっています。

 

表・テストした歩数(2日間)

 

●テスト結果(写真)

2日間装着してテストしてみた写真が下記となります。通常使用でもOタイプは1日程度での取替えが基本ですので、かなりの酷使と言えます。

 

斜め45度段目(女性スタッフA)

 

斜め45度段目(男性スタッフB)

 

斜め45度段目(男性スタッフC)

 

縦段目(女性スタッフA)

 

縦段目(男性スタッフB)

 

縦段目(男性スタッフC)

 

 

●テスト結果(官能検査)

次に4つの指標、①履き心地、②すべり具合、③折れ、④耐久性(持ち)について3名各々評価してもらいました。

●● ①履き心地 ●●

●斜め45度段目●
女性スタッフA:サラッとした履き心地を感じ通常品より爽やかな感じがした。

男性スタッフB:特に違いは感じない。

男性スタッフC:特に違いは感じない。

●縦段目●
女性スタッフA:サラッとした履き心地を感じ、特に足裏に刺さるような気持ちいい感触。

男性スタッフB:特に違いは感じない。

男性スタッフC:特に違いは感じないが、履き始めに段目の間にかかとが挟まる感じがあった。

 

斜め・縦ともに概ね変わりがないということのようですが、女性スタッフは製品版より爽やかな感覚ということです。これは男性のビジネスシューズと違いヒール高があるのが関係しているのでしょうか。

 

●● ②すべり具合 ●●

●斜め45度段目●
女性スタッフA:少し滑りやすい。

男性スタッフB:靴の中で横に滑る感覚(遊ぶ感覚)が多少ある。歩行時からストップした際、特に感じた。

男性スタッフC:特に違いは感じない。

●縦段目●
女性スタッフA:かなり滑る。履いた直後から滑るのを感じ歩きづらかった。

男性スタッフB:通常品と比較し、滑りやすい為違和感があり。使用している内に靴前方にずれてくる(画像の通り、前方がずれにより丸みをおびている)。

男性スタッフC:靴を履くときにスルッと履けた。歩いているときは少し前に滑るような感覚を感じた。

 

これはどちらも滑りやすいということで、特に縦段目については想像通りかなり滑るようです。滑りやすいが故に靴に足を入れる際は相当履きやすいことを筆者も履いたところ体感しました。

 

●● ③折れ ●●

●斜め45度段目●
女性スタッフA:折れにくい。

男性スタッフB:特に違いは感じない。

男性スタッフC:足の付け根の下あたりの折れが通常アシートよりも大きく広がった。

●縦段目●
女性スタッフA:折れにくい。

男性スタッフB:折れやすい印象。

男性スタッフC:かかとを上げるかたちでしゃがんだ時にパキッと折れる音があった。

 

折れについては段ボールは段目方向によって折れやすさが変化するためやはり違いはあるようですが、縦段目のスタッフCのように音を立てて折れるというのは、おそらく履いた当初のまだアシートが湿気を吸収していない硬い状態でしゃがんだのではないでしょうか。しばらく使って適度に吸湿すると、アシートは段目に直角に曲げても折れずにしなって曲がってくれます。

 

●● ④耐久性(持ち) ●●

●斜め45度段目●
女性スタッフA:通常品よりも良く感じた。

男性スタッフB:段のツブレ具合等から持たない印象。1日で裏面のカスが出始めた。

男性スタッフC:折れた部分からの傷みが激しく、紙くずの発生が早い印象。

●縦段目●
女性スタッフA:あまり耐久性がない感じ。1日目で結構潰れた。

男性スタッフB:耐久性はない。段のツブレ具合や、破けが1日目で生じていた為。

男性スタッフC:しゃがんだ時に折れた為か、歩いているとそこから傷みが広がりやすく、紙くずの発生が多かった印象。

 

斜め段目については女性と男性で印象が違うようです。それ以外については概ね製品版より損傷が早く紙くずの発生が進みやすいようです。

 

●● ⑤総合評価 ●●

●斜め45度段目●
女性スタッフA:履き心地も悪くなく折れにくいのが良かった(通常品だとヒールを履いていると真中から折れて切れてしまうことがある)。
若干滑りやすく感じたので斜めの角度がもう少しゆるい方がいい気がした。

男性スタッフB:通常品と比べ、使用時の差はたいして感じられなかったが、使用後の裏面のカスの出方が通常品より激しい点が気になった(靴の中のカスを落とす際の量でも認識)。

男性スタッフC:履き心地においては通常アシートとあまり変わらない印象であったが、折れや紙くずは、発生しやすい。

●縦段目●
女性スタッフA:かなり滑る感じで歩きづらくヒールには向かない。またすぐに潰れてしまった印象がある。

男性スタッフB:靴の中で滑る事で同時にインソールも上下運動する為、通常品に比べ耐久性に差が生じるのではないかと思われる。傾斜のあるヒールなどは特に適さない印象。

男性スタッフC:段目の気持ち良さは通常アシートの方が感じることが出来た。縦の場合は靴の脱ぎ履きがしやすい。しゃがんだ際にはアシートが折れてしまうのでそこから傷みやすい気がした。

 

斜め段目については女性スタッフには好評のようです。男性スタッフには製品版と特に変わらない一方、損傷や紙くずの発生が早いという評価をもらいました。

縦段目については女性・男性ともにすべりが大きく不評のようです。男性スタッフCの挙げた靴を履きやすいというメリットは確かにあるため惜しいところです。

 

 

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以上、今回は段目方向の試作品をテストするということでお送りしましたがいかがでしたでしょうか。アシートではこれ以外にも様々な試作テストを繰り返しており、今後の製品へ活かしていきたいと考えています。

次回「知って得するインソールの豆知識」2018年2月号はアシートの販売実績などについてお送りする予定です。お楽しみに。

 

Vol.3 抗菌とは ~除菌・殺菌・滅菌・減菌・制菌・静菌??~

「知って得するインソールの豆知識」も第3回となり、梅雨の季節が訪れました。梅雨時は足も蒸れるしアシートの出番・・・ですが、ここでちょっと気を付けてください。アシートは湿気は吸いますが、完全に浸水するとやはり紙であるため、簡単に破れてしまいます。よって雨の多いこの季節は普段より早めに交換する、雨に濡れたらすぐ取替える等の気遣いが必要だということをお忘れにならないようお願いします。

では今月はアシートOタイプでも謳われている「抗菌」さらには除菌や殺菌などといった言葉の意味するところについて見ていきたいと思います。

●アシートの抗菌タイプ

アシートは現行3タイプあるうちのOタイプにだけ抗菌が謳われています。B、Kタイプとも脱臭効果のある「クリスライト」は使われていますが、抗菌ではありません。

Oタイプの抗菌は表面にごくわずかに塗布しているニス的な塗料の中に抗菌剤を配合することにより実現しています。抗菌剤は銀イオン系のもので、家庭用品などでもよく「Ag+」などという表記を見ることがありますね。+というのは金属イオンのことで、銀そのものよりイオン化状態の方が抗菌効果が高いということなのです。

アシートでは抗菌タイプの開発段階においてインクメーカーと共にこの抗菌剤を塗布する手法に着目し、以後皆様にご愛顧頂いています。

●銀について

アシートの抗菌剤は銀イオン系ということなのですが、銀とはどういう物質なのでしょうか?

銀は歴史が古く、古代では金より装飾性が高いとされていたこともあるそうです。また安全性についても歴史が古く、銀食器、歯の詰め物、食品添加物などでの実績が永くあり、人類は銀を直接口に入れてきたとも言えます。その他、写真感光剤や銀貨、目薬などにも利用されてきました。また金属中で最も熱伝導率と電気伝導率が良いのも銀ということです。

このように人類は銀をうまく利用してきており、なじみのある金属だと言えます。

ただし、抗菌作用を持つ金属として銀が注目されだしたのは実はつい最近で、20世紀後半になって現代人の清潔志向の高まりやO-157などの感染症・食中毒が蔓延したりといった社会的な背景があってのことでした。

なお銀(silver)と似た名称の金属として水銀(mercury)がありますが、これはたまたま日本語の名前が似ているだけで、全く違う性質を持つ金属です。水銀は銀とは違い、非常に毒性が強い金属(常温で液体の金属)として知られています。

●抗菌とは

ではその銀が持つ抗菌性、そもそも抗菌とはいったい何なのでしょうか? 抗菌は「菌の増殖を抑える」ことであると言えます。菌は一定条件下で増殖していきますが、その増殖スピードを抑制するという意味になります。ですから必ずしも菌が減るとは限らず、「増え方を抑える」概念なのです。

なお混同されやすい「抗菌」の類似語句を下記に記します。

「殺菌」
殺菌は「菌を殺す」ことですが、どの程度殺すかという概念は入らないとされ、一部でも殺せば「殺菌」になるとされています。ですから石鹸で手を軽ーく洗っても「殺菌」と言えます(石鹸は細菌の細胞膜を破壊します)。

「滅菌」
滅菌は「菌を全て死滅または除去する」ことを意味し、最も清潔な状態と言えます。医療器具などのパッケージに「殺菌済み」ではなく「滅菌済み」とあるのもこのような理由からです。なお「全て死滅」とはいえ本当に100%除去は困難なので、例えば1ppm(100万分の1の濃度)などといったように基準値が設けられたりします。

「除菌」
除菌は菌を殺すというより「取り除く」ことを意味し、流水で菌を流したり、フィルターで菌を分離除去したりする方法を言います。完璧に除菌すれば「滅菌」と言えるでしょう。

その他、制菌・静菌・減菌・消毒などといった言葉もありますが、それはまた別の機会にしましょう・・・

●抗菌のグローバル化

直接銀イオンの抗菌性とは離れますが、抗菌が世の中に広まった頃は誇大表示や安全性に問題があったりといった粗悪な抗菌製品が蔓延し、規格化が急がれたこともあり、当時日本の産業界がまず抗菌製品に関する業界団体を設立しました。そしてガイドラインを制定し、その後2000年にJIS規格(JIS Z 2801)として国家規格となりました。

そして抗菌製品の製造・販売のグローバル化に伴い必然的に国際規格化のニーズが高まり、JISをほぼそのまま踏襲する形でISO(国際標準化機構)の規格(ISO 22196:2007)として定められたのが2007年のことです。このように日本は抗菌の分野では世界のトップランナーと言えるでしょう。

JISがそのままISOに採用されるという例はかなり稀なことだそうです。参考までに抗菌以外では家電製品などのボタンを押したときに鳴る「ピッ」などの「報知音」に関するJISがISOにそのまま採用されていたりするそうです。

●脱臭と消臭

抗菌に関連してアシートに使われているクリスライトの「脱臭剤」という言葉についても調べてみました。
脱臭と消臭、似ていますが、どのように違うのでしょうか? 下記の区分けが参考になります。

脱臭剤・・・臭気を物理的作用等で除去又は緩和するもの
消臭剤・・・臭気を化学的作用又は感覚的作用等で除去又は緩和するもの
芳香剤・・・空間に芳香を付与するもの
防臭剤・・・他の物質を添加して臭気の発生や発散を防ぐもの

(厚生労働省管轄:芳香消臭脱臭剤協議会「一般消費者用芳香・消臭・脱臭剤の自主基準」より)

アシートでは天然鉱物のクリスライトの無数の穴による臭気成分の吸着作用で臭いを物理的に除去していますので「脱臭」となります。

 

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以上、若干言葉遊び的な側面もありますが、いかがでしたでしょうか。今回関連語句を調査していくうちにホームページ上のこれまでの宣伝文句が正しいことを再確認?でき、個人的にほっとしています。また類似語句では曖昧な表現が多いことを知ることができ、大変参考になりました。