Vol.3 抗菌とは ~除菌・殺菌・滅菌・減菌・制菌・静菌??~

「知って得するインソールの豆知識」も第3回となり、梅雨の季節が訪れました。梅雨時は足も蒸れるしアシートの出番・・・ですが、ここでちょっと気を付けてください。アシートは湿気は吸いますが、完全に浸水するとやはり紙であるため、簡単に破れてしまいます。よって雨の多いこの季節は普段より早めに交換する、雨に濡れたらすぐ取替える等の気遣いが必要だということをお忘れにならないようお願いします。

では今月はアシートOタイプでも謳われている「抗菌」さらには除菌や殺菌などといった言葉の意味するところについて見ていきたいと思います。

●アシートの抗菌タイプ

アシートは現行3タイプあるうちのOタイプにだけ抗菌が謳われています。B、Kタイプとも脱臭効果のある「クリスライト」は使われていますが、抗菌ではありません。

Oタイプの抗菌は表面にごくわずかに塗布しているニス的な塗料の中に抗菌剤を配合することにより実現しています。抗菌剤は銀イオン系のもので、家庭用品などでもよく「Ag+」などという表記を見ることがありますね。+というのは金属イオンのことで、銀そのものよりイオン化状態の方が抗菌効果が高いということなのです。

アシートでは抗菌タイプの開発段階においてインクメーカーと共にこの抗菌剤を塗布する手法に着目し、以後皆様にご愛顧頂いています。

●銀について

アシートの抗菌剤は銀イオン系ということなのですが、銀とはどういう物質なのでしょうか?

銀は歴史が古く、古代では金より装飾性が高いとされていたこともあるそうです。また安全性についても歴史が古く、銀食器、歯の詰め物、食品添加物などでの実績が永くあり、人類は銀を直接口に入れてきたとも言えます。その他、写真感光剤や銀貨、目薬などにも利用されてきました。また金属中で最も熱伝導率と電気伝導率が良いのも銀ということです。

このように人類は銀をうまく利用してきており、なじみのある金属だと言えます。

ただし、抗菌作用を持つ金属として銀が注目されだしたのは実はつい最近で、20世紀後半になって現代人の清潔志向の高まりやO-157などの感染症・食中毒が蔓延したりといった社会的な背景があってのことでした。

なお銀(silver)と似た名称の金属として水銀(mercury)がありますが、これはたまたま日本語の名前が似ているだけで、全く違う性質を持つ金属です。水銀は銀とは違い、非常に毒性が強い金属(常温で液体の金属)として知られています。

●抗菌とは

ではその銀が持つ抗菌性、そもそも抗菌とはいったい何なのでしょうか? 抗菌は「菌の増殖を抑える」ことであると言えます。菌は一定条件下で増殖していきますが、その増殖スピードを抑制するという意味になります。ですから必ずしも菌が減るとは限らず、「増え方を抑える」概念なのです。

なお混同されやすい「抗菌」の類似語句を下記に記します。

「殺菌」
殺菌は「菌を殺す」ことですが、どの程度殺すかという概念は入らないとされ、一部でも殺せば「殺菌」になるとされています。ですから石鹸で手を軽ーく洗っても「殺菌」と言えます(石鹸は細菌の細胞膜を破壊します)。

「滅菌」
滅菌は「菌を全て死滅または除去する」ことを意味し、最も清潔な状態と言えます。医療器具などのパッケージに「殺菌済み」ではなく「滅菌済み」とあるのもこのような理由からです。なお「全て死滅」とはいえ本当に100%除去は困難なので、例えば1ppm(100万分の1の濃度)などといったように基準値が設けられたりします。

「除菌」
除菌は菌を殺すというより「取り除く」ことを意味し、流水で菌を流したり、フィルターで菌を分離除去したりする方法を言います。完璧に除菌すれば「滅菌」と言えるでしょう。

その他、制菌・静菌・減菌・消毒などといった言葉もありますが、それはまた別の機会にしましょう・・・

●抗菌のグローバル化

直接銀イオンの抗菌性とは離れますが、抗菌が世の中に広まった頃は誇大表示や安全性に問題があったりといった粗悪な抗菌製品が蔓延し、規格化が急がれたこともあり、当時日本の産業界がまず抗菌製品に関する業界団体を設立しました。そしてガイドラインを制定し、その後2000年にJIS規格(JIS Z 2801)として国家規格となりました。

そして抗菌製品の製造・販売のグローバル化に伴い必然的に国際規格化のニーズが高まり、JISをほぼそのまま踏襲する形でISO(国際標準化機構)の規格(ISO 22196:2007)として定められたのが2007年のことです。このように日本は抗菌の分野では世界のトップランナーと言えるでしょう。

JISがそのままISOに採用されるという例はかなり稀なことだそうです。参考までに抗菌以外では家電製品などのボタンを押したときに鳴る「ピッ」などの「報知音」に関するJISがISOにそのまま採用されていたりするそうです。

●脱臭と消臭

抗菌に関連してアシートに使われているクリスライトの「脱臭剤」という言葉についても調べてみました。
脱臭と消臭、似ていますが、どのように違うのでしょうか? 下記の区分けが参考になります。

脱臭剤・・・臭気を物理的作用等で除去又は緩和するもの
消臭剤・・・臭気を化学的作用又は感覚的作用等で除去又は緩和するもの
芳香剤・・・空間に芳香を付与するもの
防臭剤・・・他の物質を添加して臭気の発生や発散を防ぐもの

(厚生労働省管轄:芳香消臭脱臭剤協議会「一般消費者用芳香・消臭・脱臭剤の自主基準」より)

アシートでは天然鉱物のクリスライトの無数の穴による臭気成分の吸着作用で臭いを物理的に除去していますので「脱臭」となります。

 

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以上、若干言葉遊び的な側面もありますが、いかがでしたでしょうか。今回関連語句を調査していくうちにホームページ上のこれまでの宣伝文句が正しいことを再確認?でき、個人的にほっとしています。また類似語句では曖昧な表現が多いことを知ることができ、大変参考になりました。